電子カルテ導入の流れと問題点

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■電子カルテの標準的な導入手法

中規模以上の病院で最も多いパッケージ型の電子カルテの導入手法はどのメーカをとっても下記の流れが一般的です。

1)キックオフ

2)ワーキンググループ(運用打合せ)

3)マスター作成

4)パラメータ設定

5)部門システム連携テスト

6)操作研修

7)リハーサル

8)データ移行、事前入力

9)本稼働

その他に上記では対応できない要望があった場合、パッケージのカスタマイズを行う場合があります。

この導入方法は電子カルテの前身オーダリングシステムが出はじめた時からあまり進化していません。今後変わっていくものなのか各工程の問題点を見ていきましょう。

■各工程の内容や問題点等

1)キックオフ

プロジェクトの進め方、前提条件、各担当者の顔合わせ等を行います。本来であればココでこれから頑張ろう!という雰囲気になるのが理想ですが、病院によってまちまちです。わけも分からず参加しているということもあります。今まで使い慣れた電子カルテが他メーカーにリプレイスされる場合はマイナスイメージからのプロジェクト開始になる場合もあります。価格だけで上層部が決めたということで冷めている場合もあります。

2)ワーキンググループ

いつくかの業務に分割して運用検討を行います。電子カルテ導入後のシステムを使った運用を各部署の代表が顔を合わせて調整します。病院の事務局が仕切る場合とメーカーの導入担当者が仕切る場合があります。運用上他部署と連携して成り立っている部分多々あるのですが、自分の部署に不利な運用にしたくないと議論が白熱する場合もあります。ワーキングの回数が長引くとメーカー側の工数がかさみ赤字になるので病院によっては大変になります。病院側は他病院事例を割と気にしますのでメーカー側の導入担当者の経験に左右されます。

3)マスター作成

病院によって診療科や扱っている処置内容、院内で採用している薬が異なるためシステムに登録して使えるようにします。これをマスターといいます。基本的には運用後、処置や薬は変動するので病院側での作業になります。ただシステム担当者が居ない病院も多く、導入時に一括で作成する場合はメーカーの導入担当者が手伝う事もあります。しかし運用後のメンテナンスは病院側なのでそこは引き継ぎます。運用後のメンテナンスを含めて委託する病院もありますが別途費用はかかります。使用するマスターは標準が準備されていてそこから選択するだけという方式が理想ですが、まだ一から個別で登録するメーカーが多いのも現実です。

4)パラメータ設定

これはメーカーの導入担当が行う作業です。パッケージといっても医療機関毎によくある要望のパターンが設定で実現できようになっています。これは導入件数の多いメーカーのほうが設定も多いので自由度が効きます。設定で対応できないような要望は運用で回避するか、お金をかけでカスタマイズするかになります。

5)部門システム連携テスト

これはメーカーの導入担当と部門システムの導入担当が行う作業です。電子カルテは既存の部門に導入されている様々なシステムと連携可能です(全てではありません)。それにより電子カルテで入力された情報を再び部門システムで入力しなくても良くなります。その連携が正常に行われているかをテストします。

6)操作研修

電子カルテの操作を講義形式で職種毎のコマ割りでインストラクターがレクチャーします。実際に使う電子カルテを操作しながら使用感を確認します。操作研修に出席してから病院側の温度感が上がってきます。それまではごく一部のメンバーが打ち合わせやマスタ作成等を行ってましたが、ココに来てはじめて電子カルテが稼働するんだという意識になってきます。

7)リハーサル

ワーキンググループにて検討した運用、操作指導にて学んだ操作方法を基に実際の診察を想定してシミュレーションを行います。シナリオを作成し模擬患者役を決めて本番さながらのシミュレーションを行います。ここで問題があれば運用は見直されます。

8)データ移行、事前入力

旧システムからデータを移行したり、オーダを事前に入力したりして本稼働後にデータが入っている状態にします。それによりスムーズに診察が行なえます。データ移行はシステム間の制約によりすべてが移行できない場合もあります。その場合は手入力で対応します。そもそも電子カルテのデータの持ち方が標準化されておらず、完全移行できないことがメーカの顧客囲い込みに一役買っているのが現状です。

9)本稼働

システム稼働時は院内の各所に操作の分かるものを立ち会わせて診察が滞らないようにします。また導入担当者も待機し、システム上の問題が発生すれば速やかに対応します。ただし、むやみに設定を変更すると現場が混乱するので1職員の意見では設定変更はしません。要望を一覧化し、やるやらないを院内で決定します。大体1、2週間で運用が落ち着きますので本稼働の立会の目処はそのくらいです。院内の各所の立会は早めに解除し一箇所に待機し電話対応する場合もあります。立会の手厚さは費用をいくらかけるかによります。

 

 

 

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